【超音波療法とは?】理学療法における使用について

超音波療法は捻挫の治療から薬物の投与まで、さまざまな状況で使用できます。今回の記事では超音波療法について詳しく見ていきましょう。
【超音波療法とは?】理学療法における使用について

最後の更新: 25 8月, 2020

超音波は理学療法士が最もよく使用する機器の1つです。医療専門家は数十年前から超音波療法を理学療法に取り入れ、さまざまな症状の診断と治療のサポートとして活用しています。

医療の現場では、一般的に診断を行うための検査として超音波を使用することがよくありますが、今回は、診断ツールとしての超音波の使用とは別の、理学療法の分野における超音波のさまざまな用途に焦点を当てます。

超音波療法はどのように機能しますか?

超音波装置は、小さな振動や力学的な波を体内に送ります。人間は最大20,000 Hzの周波数しか認識できませんが、超音波装置は1〜3 MHzの周波数範囲で作動するため、1秒あたり100〜300万サイクルです。

これは、私たち患者はその影響には全く気づかないことを意味しますが、体の一部に超音波プローブを当てると波が発生し、その領域の組織が非常に速く振動します。振動だけでなく、これにより熱が発生して、その領域への血流が増加します。この2つの物理作用により、超音波療法がとても有益だと考えられています。

Journal of Orthopaedic Researchで発表された研究によると、超音波がコラーゲン組織の刺激に特に優れていることが示されました。その結果、超音波療法は、通常は、腱、靭帯、筋膜、瘢痕組織などの構造に対して最善の効果が期待できると考えられています。

超音波療法–方法論

超音波を使用する前に、理学療法士は最初に皮膚にゲルを層のように塗布します。これは、超音波のプローブが皮膚を貫通して組織のより深い層に到達するための導体を必要とするのでゲルは最適です。

超音波療法

同じ組織を長期間「ハンマーで打つ」ことを避けるために、プローブを絶えず動かすことが重要です。小さな円を描くように動かすことで、損傷を引き起こすことなく、組織全体に振動を拡散させることができます。

超音波装置は、一定または脈動流で波を生成することができます。超音波の一定の流れはより大きな熱効果を生み出し、脈動流はより大きな力学的効果を生み出すのに役立ちます。

理学療法における超音波の使用

患者を治療するためには、どのような状況で熱と高周波振動を使用することができるのでしょうか?

治療として、一般的に超音波療法が使われるいくつかの条件を見ていきましょう。

  • 炎症:超音波療法は、炎症を引き起こす症状にとって効果的な治療法です。超音波の効果により標的とする部位への血流が増加し、回復が促進されます。炎症が急性ではない場合、血流の増加により、体は古い細胞や損傷した細胞を置き換えるようになります。このため、超音波療法は、腱炎、滑液包炎、および嚢炎などの炎症の治療に使われることがあります。
  • 捻挫:前述したように、腱は超音波を吸収する最も優れた組織の1つです。この腱が過度に伸びて損傷して捻挫をした場合は、超音波療法が治療の選択肢の一つになります。
  • 回復と傷跡:超音波療法は、細胞の代謝を高め、回復を促進することにより、治癒プロセスをスピードアップするのに役立つでしょう。

現段階では、超音波療法が筋骨格系損傷の効果的な治療であるかどうかを確認するのに十分な科学的証拠はありません。筋肉のけいれんなどのに超音波療法を推奨する人もいますが、その効果はまだ証明されていないのです。どちらにしても、理学療法には、その効果が実証されている多くの治療方法があるため、理学療法士は、患者に提供する多くの治療の選択肢があります。

超音波療法

イオントフォレシス

イオントフォレシス(イオン導入法)は、超音波を使用して患者の皮下組織に薬物を送達する方法です。イオントフォレシスでは、皮膚に導電性ゲルを適用する代わりに、より良い吸収が可能なゲルの形で皮膚に直接薬剤を適用します。使用する薬によって、この方法の効果が異なるのでご注意を。

超音波療法–禁忌および予防策

高周波振動を使用する超音波治療は、理学療法とし使用する場合は注意が必要です。

  • 超音波は腫瘍や出血する可能性のある組織での使用には適していません。
  • 患者が感染症にかかっているのか、または深部静脈血栓症、動脈硬化症、そして同様の循環系の問題などを発症している場合には、超音波療法はお勧めできません。
  • 金属製のインプラントやペースメーカーを使用する患者に超音波療法使用する場合は、注意が必要です。骨の部分に特に注意しながら、プローブを頻繁に移動することが大切です。

超音波療法と理学療法における役割

これらの点をすべてを考慮に入れると、超音波療法は理学療法において重要な役割を果たしていることがわかります。現段階では、さらなる研究が必要ですが、炎症を起こしている組織と慢性化した症状には、有望だと考えられています。ただし、積極的治療に分類される可能性があるため、他の治療法と同じように超音波療法のリスクを知ることが大切です。


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